
今,IT分野でのD進がアツい!!!
※D進: 博士課程(大学によっては博士後期課程と呼ばれることも.この記事では博士課程,と統一します.)へ進学すること
こんにちは.情報学研究科D1のKateです.jackでは初のIT系の博士課程の人です.
このブログ記事では,IT系の専攻は博士進学するしかねえべ,ということを書きます.
博士課程とは?
通常,4年制の学部を卒業すると,その次に進むことができる課程として標準2年間の修士課程があります(一部専攻を除く).ここまではまだ割と知られていることかなと思います.
博士課程は,修士課程の次の課程として進学することができ,標準3年として設定されています.こちらはまだあまり知られていないのかなあと思います.実際,博士課程に進学してからjackの新歓などで話した新入生たちからは,「博士課程ナニソレ」という声をよく聞きました.
さて,とりあえず国内の博士課程の現状を見てみましょう.R5年度学校基本調査によると,修士課程在学者は168706人,博士課程75841人だそうです.また,日本人で博士の学位を持つのは約1万人に1人とのことです.メタルキングよりも,色違いのピカチュウよりも珍しい存在らしいですね(https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2024np/zuhyou/05k2024-1.xlsx, https://www.mext.go.jp/content/20240711-koutou02-000037014_7.pdf).
博士号は学位の中で最高峰だけあって,取得の難易度は学士・修士と比べて高く,一定の研究業績が必要です.そのため,博士号は研究者としての能力の証明,より具体的には課題を発見し解決策を考える力やデータ分析,論理的思考力などの証明と言えるでしょう.
しかし,そのような能力や価値の一方で,日本においては希少性が悪い方向に作用し,特に人文学系の専攻を中心に民間企業での就職で難儀することが続いたと言われています.企業からすると「博士課程の人材の活かし方がわからない」という状況だったとも言われています.
また,博士課程進学者は前述の通り修士課程に比べて少ないです.その1番の原因として金銭面があるようです.実際,博士進学にあたっての経済的支援の拡充が求められています(https://www.mext.go.jp/content/1423020_012.pdf).修士課程を修了して民間企業で就職したら,初任給は約24万円です(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/19/01.html).博士課程では(社会人博士などでない限り)このような給料は無く,逆に学費は必要なわけです.
…あれ?ここまで読むと悪いところの方が多いですね?これじゃあ確かに博士進学したくなくなってしm…
ちょおおおっっっっとまっったああああああ!!!!
安心してください.ここから,これらの問題は気にする必要が無く,安心して進学できるヨ!という話をしていきます.
アツい理由①: 分野として活発
もう語る必要はないでしょう.情報技術はもはやどこでも必須の社会インフラとしての役割を担っています.ニュースで情報技術関連の話題が流れない日は無いでしょう.
アツい理由②: 経済的支援が充実
ありがたいことに,様々な機関による経済的支援制度が整備されています.これらの制度の多くが研究費と生活費(研究専念支援金などの名前になっていることがあります)のセットで支援すると打ち出しています.
民間のものを紹介するとキリがないので,ここでは日本学術振興会,東海国立大学機構,名大の制度に関して紹介します.
日本学術振興会 特別研究員
学振DC1,DC2などと呼ばれるものです.学位取得後に大学や国の研究所など,いわゆるアカデミアと呼ばれる進路を希望する場合は,これに採択されていることがかなりアドバンテージになるようです.
この制度では,生活費20万円/月,研究費80万円/年(A区分の場合.これより額が大きいB区分というものもあります.)が支援されます.また,名大では学振に採択されると学費が全額免除になります.
一方でかなり狭き門といわれており,令和6年度のDC1・DC2は採択率がともに15%ほどでした.
東海国立大学機構 メイク・ニュー・スタンダード次世代研究事業
メイク・ニュー・スタンダード次世代研究事業(新SPRING)と呼ばれるものです.名大・岐阜大の学生が応募できます.
この制度では,生活費18万円/月,研究費25万円/年(挑戦的Reserdentというものに認定されると,50万円/年に増額されます)が支援されます.こちらに採用されると,学費が半額免除になります.
こちらは採択率は公表されていない(と思います)ものの,学振に比べてかなり高い通過率である印象です.
https://dec.nagoya-u.ac.jp/spring_information
名大 TokAI Boost
名古屋大学 次世代AI人材育成事業と呼ばれるもので,こちらはAI技術に関する学生が申し込むことができる制度になっています.「関連する」と言いましたが,「AI分野そのものを研究する人材(AI専門学生)と、自身の研究分野においてAI技術を効果的に活用する人材(AI活用学生)の両方を対象とし」ということで,様々な専攻の学生が申し込みできます.
この制度は,生活費と研究費の配分を選択できるという特徴があり,以下の選択肢があります.単一の支援制度としては,この投稿で紹介する中で金額が一番大きいです.

https://www.mds.nagoya-u.ac.jp/mda-program/tokai-boost
名大 卓越大学院プログラム
修士・博士の5年一貫の教育プログラムで,名大では2025年度現在,4つのプログラムが展開されています.これらプログラムではそれぞれ生活費支援をしています.
筆者が採択されているTMI卓越プログラムでは,18万円/月程度が支援されます.学費も修士では全額免除,博士では半額免除となります.詳細は,各卓越プログラムのホームページや募集要項などをご参照ください.
https://www.tmi.mirai.nagoya-u.ac.jp
https://www.dii.engg.nagoya-u.ac.jp
https://cibog.med.nagoya-u.ac.jp
https://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/gtr/
名大 各種QTA・RA雇用など
名大での公開講座や研究活動におけるアシスタントとしての雇用により,高い時給で専門性が要求される内容の業務のアルバイトの募集があることがあります.こちらは募集も給料も多岐にわたるため,各自情報収集をしていただければと思います.参考までに,とあるQTAでは月額11万円程度が支払われるそうです.
アツい理由③: 就職で引っ張りだこ
冒頭で就職難の話をしましたが,現在では幸いにもこの流れは改善に進んでおり,今では博士人材の採用を積極的に進める企業が増えているようです.
経産省資料によれば,高い専門性を評価して高い給料を提示している企業が増加しているようです.また,過去に筆者が参加した企業の管理職や研究員の方々との意見交換の際には,「博士人材が持つ,分野に限らない,課題を見つける力,仮説検証を遂行する力などを特に評価している」との声を聞きました.この流れは技術系や理工学系に限った話ではなく,人文系を含む幅広い専攻に対しても言えるようです.
特に,情報技術関連分野は,様々な企業が博士課程在学中から高い給料でのインターンシップを実施しており,そのまま分野の活性化と採用へつなげる動きが強く見られます.周りでは,2ヶ月で80万円程度の給料を支払うようなインターンシップに参加している学生を結構見かけます.
このような博士人材の価値高騰の流れは加速し,博士号の価値は更に高くなるのではと見ています.
裏話)筆者は学位取得後は民間企業での就職を考えています.なので,Dを取って就職で困りそうであれば,そもそもD進していません.これが何よりの証拠…になればいいなあ.
まとめ
みんなD進しようぜ!!